「ついやってしまう体験」のつくりかた

宝箱

 上記の絵をご覧になって、いかがでしょうか?何の指示や説明がなくても頭の中でなぜか指が、鼻の穴に向かってしまいませんでしたか?

 本書は「つい」行動してしまう体験をデザインする、仕組み、手法を解説しています。まさに私の6歳の息子にこの絵を見せたとたん、何も言わずに自分の2本指を鼻に、、(笑)。

 著者(玉樹 真一郎、初版2019.8.7)は1億台売れたと言われる任天堂「wii」の開発担当者で、人の心の動かし方を徹底的に研究したそうです。本書ではゲームに基づいて「つい」をつくる方法を3つ(「直観のデザイン」「驚きのデザイン」「物語のデザイン」)紹介しています。中でも、 「直観のデザイン」「驚きのデザイン 」を主に取り上げたいと思います。

 「直観のデザイン」。直観的にわかるものは面白いということ。ゲーム側からの指示、命令ではなく、自分で動いてみてそれが正解であることが分かった時の喜びを感じてもらうということ。指示通りに動かしてクリアしても何も面白くないですよね。
 ファミコンの「スーパーマリオブラザーズ」を題材に上記内容を説明しているのですが、このゲームの目的は、クッパを倒す、点をたくさん取る、ピーチ姫を助けるではなく、「右に行くということ」。
 マリオの帽子やひげは、マリオが右を向いていることを認識しやすいように作ったそうです。そして、なんとなく右に行けばいいんかな(仮説)?と思いながら少し右に歩いてみる(試行)とクリボーと出会います。この瞬間プレイヤーは「変なのでてきた!」というより「右に進むってことで正しかったんや!」という喜び(歓喜)を感じるという設計です。最初のクリボーは重要です。

 仮説→試行→歓喜 これを繰り返しプレイヤーに与えることで、プレイヤーはワクワクがとまらなくてやめられなくなりますよね!「わっ!キノコとったら大きくなったやん!!」とか。

 しかし、上記のような直観のデザインが重なり続けると今度は「疲れ」が出てきます。そこで「驚きのデザイン」ですね。これについては、「ドラゴンクエスト」で説明されています。
 ドラクエは基本的に真面目に世界を救おうってゲームですが、シリアスなストーリに一区切りついたとき、次にたどり着いた街である女の人に話すと「ぱふぱふしてほしい?」っていうぱふぱふ女が出てきます。ご存じですかね?これこそが、「驚きのデザイン」。直観のデザインでワクワクさせといて、それに疲れてきたときに「ぱふぱふ」を投入。シリアスストーリーだからこその「ぱふぱふ」で、プレイヤーはいい意味で裏切られた感覚になり、疲れがとれます。

  「仮説→試行→歓喜」 これを繰り返し、間で「驚き」を挟む。

  最後、「物語のデザイン」について。物語によってプレイヤーを共感させ、成長を感じさせること。これについても興味深い内容が多数書かれています。また、 巻末には、本書の学びを仕事、子育てにどう活かすかのヒントも掲載されています。 本書の表紙デザインも「つい」手にとってしまうデザインです。ぜひ気になる方は読まれてください。

 他者に自身の思いを押し付けてはだめですね。「つい」やってしまうような仕組みをデザインしなければ。子供が「つい」おもちゃを片付けてしまう。「つい」勉強してしまう。そんなデザインを考えたいと思います。

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