ファシリテーター養成講座【書評】|森時彦

会社員

昨今、リーダーシップのスタイルが変わってきています。指示命令型リーダーは嫌われ、自分たちに問いかけ、考えさせてくれる組織に転職しようとする人材が増えてきました。転職の時代です。そこで求められるリーダーのスキルがファシリテーションスキル。

「ファシリテーション」。耳にしたことがある方も多いと思いますが、プレゼンテーションと違って、なかなか学ぶことがない領域なのではないかと思います。

ファシリテーションとは

会議等の場で、発言や参加を促したり、話の流れを整理し、参加者の認識を一致させたりする。目標達成をするために、指示命令するのではなく、グループ活動が円滑に行われるよう、問題解決・合意形成などを支援促進する能力。

意味のない無駄な会議に遭遇したことありませんか?

  • 目的がはっきりしない
  • アクションを決めない
  • 他部署のせいにする
  • 過去の話の蒸し返し
  • 部分最適の主張を繰り返す
  • 堂々巡り
  • 問題のすり替え

こういう会議をファシリテーターはうまくまとめていきます。

本書ではこのファシリテートの具体的な手法が書かれています。
かなりボリュームがあるのでざっくりいきます。

①プロセスをデザインする

ゴールを明確にしたうえでそこへ向かう最適プロセスを、論理的な側面だけでなく、心理的な側面からも設計する。私たちは、押し付けではなく、「これでできる」と自ら気づくことでやり遂げようとする。いい質問をして、なおかつ正しい順番で導く。声の大きな人が牛耳っている組織では、その人を外して議論する必要があるかもしれない。会議の参加者としてだれを選ぶかもプロセス。

②場をコントロールする

①でデザインしても実際にはうまく進まないもの。
話し言葉だけでは、言葉尻をとるなどして感情的な対立を生んだり、意味を取り違えて、論点を見失うことも少なくないことから、参加者全員が見えるホワイトボードを使い、ポイントを書き出し、議論の間中、意見の見える化をする。
また、ブレーンストーミングなどによる意見出しの場で、全員参加、脳の活性化のためにも「批判をしない」などのルールを明確化しておく。経験の長い人ほど「前やったが駄目だった」「それは現実的じゃない」などと言いがち。ルール違反者には「イエローカード」を提示するなどの少しおもしろい工夫をする。

③触発する、噛み合わせる

意見が活発に交わされるだけでは十分ではない。出た意見をその議題に合うフレームワーク(SWOT等)を利用して、全員が話を整理できるようにする。全員が整理し理解できると、全体の力が引き出せる。

④合意形成、行動の変化

全員の合意が得られればいいが、現実的には本質的な考え方の違いや、時間切れで合意が得られないときがある。できるだけ全員からの協調的な合意を目指すが、無理な場合は現実的な範囲の中で工夫する。例えば、決め方について会議のはじめに合意を得ておく(○○時までに決まらなかった場合は、○○部長決裁とし、○○時に採否を明らかにする等)。
合意形成もさることながら、その後の行動の変化を目指したい。

本書では、上記の①~④の手法を具体的に想像しやすいようにありそうな会議のシーンを織り込みながら解説してくれています。非常にわかりやすい!

本書を読んで理解を深めるのが一番いいですが、会議の目的を開始前に明確にし共有することであるとか、批判しないとか、議論をホワイトボードで見える化する等は本書を読まなくても、明日から使えるのではないかと思います。

アメリカではこの「ファシリテーション」の考え方は40年以上前からあるそうです。アメリカは多民族国家で考え方も違う人間がたくさん集まっています。チームを導くには、必須スキルですよね。

ダイバーシティが進み、価値観が多様化する現在では、日本でも同様にファシリテーションスキルのある人の需要が高まっています。
М&Aは日本でもかなり件数が増えてきています。М&Aというとディテールの取決めにばかり目がいってしまいますが、買収後にどう円滑に統合させていくかが重要な課題です。買収したはいいが統合があたふたすれば大金だけでなく時間、労力が無駄になってしまいます。

生産性の向上には、いいファシリテーターによる質の高い会議が必要ですね。無駄な会議はやめましょう。

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